豊かで圧倒的な大自然に抱かれたハワイ諸島には、ここでしか見られない独特の進化を遂げた固有種がたくさんいます。
では、なぜハワイには固有種が多いのか、ご存じでしょうか。
この記事では、ハワイに固有種が多い理由やどのような動物たちがいるのか、そして、その多くが絶滅危機に陥っている理由などについて解説します。
目次
ハワイに固有種が多い理由
ハワイの在来動物の中で、固有種はおよそ90%を占めると言われています。
ハワイに固有種が多くなった理由は、ハワイ諸島が太平洋の孤立した島で、周囲の陸地から3,000㎞以上離れているためです。
絶海の孤島に自力で侵入することは、大変困難で稀なこと。隔絶された環境であることから、適応放散と呼ばれる独特の進化を遂げることになりました。
・適応放散:進化に見られる現象のひとつで、単一の祖先から多様な形質の子孫が出現すること
たとえば、適応放散ではハワイミツスイ類が有名です。もともとは1種類のフィンチ(小鳥の一種)だったものが、くちばしの形状や体の色、大きさなど多様な子孫に分かれ、亜種を含めれば50種類以上にもなっています。
外敵がいないままで進化したため、他の地域では見られない派手で美しい赤や黄色をした種もいます。
動物が自力で海を渡ってハワイ諸島に根付く可能性は低く、大陸と比べると固有種はさほど多くありません。現在、鳥類が約50種、哺乳類が2種、淡水魚類が5種、陸産の貝類が約1000種、昆虫類が5100種ほどの、計6000種ほどと言われています。
ハワイ固有動物の哺乳類は2つだけ
ハワイ固有の哺乳類はコウモリとアザラシの2種のみです。
【ハワイシロゲコウモリ】
ハワイシロゲコウモリは英名「Hawaiian hoary bat(ハワイアンホーリーバット)」、そしてハワイ名「Ōpea’ape’a(オペアペア)」という、ハワイ固有のコウモリです。
空を飛んで北米大陸から渡ってきたとされ、ハワイ諸島全域で生息しています。
現在は絶滅危惧種とされており、オアフ島では滅多に目撃されません。減少の原因は森林伐採や風力タービンとの衝突、外来種との食料争いです。
【ハワイモンクアザラシ】
ハワイモンクアザラシは英名「Hawaiian monk seal(ハワイアンモンクシール)」、そしてハワイ名「Ilio-holo-i-ka-uaua(イーリオホロイカウアウア)」という、ハワイ固有のアザラシです。
海を泳いでハワイにやってきて、そのまま定着したと考えられています。
保護政策によって増えつつありますが、外来種のサメによる捕食や人間による乱獲、環境汚染などで、変わらず絶滅危惧種です。
ハワイ固有の面白い鳥たち
ハワイ在来の鳥類は50種類ほどいると言われていますが、実はそのほとんどが固有種です。その中でも特に有名な2種を紹介します。
【ネネ(ハワイガン)】
ネネ(Nene)はハワイ州の鳥としても知られている雁(ガン)の一種です。
祖先はカナダガンという渡り鳥でしたが、ハワイに定着して以来、海を渡るのをやめてしまったばかりか、水辺で暮らすことすらやめてしまいました。
ハワイに持ち込まれたマングースや犬、ブタ、ネズミなどによって被害を受け、一時は絶滅しかけたことも。継続的に保護が必要とされる鳥です。
【アララ(ハワイガラス)】
ハワイガラスはハワイ語でアララ(`Alalā)と呼ばれているカラスの一種で、野生絶滅種です。
1992年には個体数が12羽になり、2002年には最後まで残っていた野生のつがいもいなくなってしまいました。現在は人間が飼育しているだけになります。
面白い鳥として有名だったのは、アララはイエイエの実しか食べないと言われていたことです。ただし、実際には複数の木の実と鳥類の卵や雛、花、腐肉などを食べています。
野生が絶滅した大きな原因は環境破壊です。
ハワイ固有の海洋生物たち
ハワイ固有の海洋生物たちもみていきましょう。
【サンゴ】
ハワイ諸島で見られるサンゴは約6種類。いずれも暗い色合いと低い背丈が特徴です。
地球温暖化や環境汚染による白化現象が問題視されており、ハワイ州では2021年よりサンゴ礁に有害となる成分を含む日焼け止めの販売を禁止しています。
【ウミガメ】
ハワイでは古代から神聖な生き物として大切にされてきたウミガメ(ホヌ)は、地球最古の海洋生物の一種です。
ハワイで多くみかけるウミガメはアオウミガメですが、触ることは法律で禁止されています。
【ザトウクジラ】
ザトウクジラは毎年12月〜4月にかけて繁殖と子育てのためにハワイへやってきます。
しかし、近年は温暖化によって暑くなりすぎたハワイ諸島を避け、小笠原諸島などでよく見られるようになってきています。
【イルカ】
ハワイでは、ハシナガイルカ、バンドウイルカ、マダライルカの3種類が見られます。ハワイ州ではイルカから50ヤード(約46m)いないに近付くことは禁止されているため、観察の際は十分に離れるようにしましょう。
【サメ】
ハワイには約15種類のサメがおり、ハワイ語では「マノ」と呼ばれています。古代から、ハワイではサメの歯を御守りや武器に、そして皮を楽器に使用していました。
【マンタ】
マンタは世界で3種類が確認されていますが、その内2種類がハワイに生息しています。
ハワイのツアー会社では夜中にマンタを観察できるシュノーケリングツアーを催行しており、とても人気です。
ハワイは「絶滅危惧種の宝庫」とも呼ばれている
ハワイはその大きさでいえば全米の500分の1という小ささですが、実は全米の絶滅危惧種の半分ほどが集まっています。
極端な気候変動もなく、さしたる外敵もいないはずのハワイで固有動物・植物が絶滅の危機に瀕している理由は、人が外から持ち込んだ動植物の影響です。
ハワイ先住民が持ち込んだ動物とその影響
最初に移住した古代ポリネシア人が持ち込んだのは、ブタ(プアア)、イヌ(イーリオ)、ニワトリ(モア)の3種で、いずれも食用のためだったと言われています。
イヌはすでに絶滅しました。しかし、ブタとニワトリは野生化して、在来の植物に大きな影響を与えています。
そのため環境保護団体は駆除を提起しているのですが、先住ハワイアンたちは伝統文化の消滅につながるとして反対、対立が続いています。
西洋人が持ち込んだ動物とその影響
西洋人は船で、シカやヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、マングースなどを持ち込みました。
それらが在来動物の卵を食べたり在来植物を食べたり掘り起こしたりすることで、凄まじい勢いで在来種・固有種が絶命に追い込まれていったのです。
絶海の孤島だからこその独特な進化!ハワイの固有動物を見守ろう
太平洋の真ん中にポツンとあるハワイ諸島では、外から動物が来にくい状況であることから、定着した固有動物は独特の進化を遂げてきました。
そのため、現在わたし達は、他では見られない特徴を持った面白い動植物を目にできるのです。
しかしながら、人間や人間が持ち込んだ動植物、環境破壊などによって多くの種が絶滅したり、絶滅の危機に瀕しています。
そのことを忘れないようにしながら、ハワイ旅行を楽しんでくださいね。ルールは守り、絶滅危惧種の保護を継続していきましょう。