白い砂浜に青い海、ヤシの木の影——ワイキキビーチと聞いて誰もが思い浮かべる風景です。
しかし実はこの砂浜、100年近くにわたって人の手で「維持」され続けてきた場所だということはご存じでしょうか。もともとは湿地帯だった土地がどうやって世界的なビーチリゾートになったのか、その舞台裏を知ると、次にワイキキの砂を踏む瞬間が少し違って見えてきます。
目次
ワイキキはもともと湿地帯だった——100年前の埋め立て史
今でこそ砂浜が広がるワイキキですが、20世紀初頭までは水田やタロイモ畑が広がる湿地帯でした。
1920年代、水はけの悪いこのエリアを開発するため、内陸から海まで水を通す「アラワイ運河」の掘削工事が行われ、そのときに出た土砂で湿地が埋め立てられました。もとの海岸線は岩場やサンゴ礁が中心で今のような白い砂浜ではなかったとされています。
観光開発が本格化する中で、近隣の海底や州内の他のビーチから砂が運び込まれ、現在のワイキキビーチの原型がつくられていきました。過去75年ほどの間に持ち込まれた砂の総量は約30万立方ヤード(東京ドームの3分の1程度に相当する体積)にのぼると州は推計しています。
「カリフォルニアから砂を輸入した」は本当か——2012年の補砂プロジェクトの実態
「ワイキキの砂はアメリカ本土から船で運ばれた」という話を耳にしたことがある人もいるかもしれません。1920年代から1970年代にかけて、護岸工事に伴い南カリフォルニアなど島外から砂が運ばれた記録があるとされますが、現在この方法は使われていません。
近年の補砂はワイキキ沖合の海底に堆積した砂を吸い上げて陸に戻す方式が主流です。たとえば2012年には、シェラトン・ワイキキとロイヤル・ハワイアン・ホテルの間の突堤からデューク・カハナモク像付近までのクヒオビーチ一帯で、約2万4000立方ヤードの砂を沖合から汲み上げる工事が実施され、総工費は約250万ドル、ビーチ幅は10メートル以上広がりました。
この費用はハワイ州のビーチ復元基金や州観光局、周辺ホテルの共同出資でまかなわれ、2006年以降だけでも維持管理に少なくとも1000万ドルが投じられているといわれています。
なぜ砂は消え続けるのか——サンゴ礁と海面上昇の科学
ワイキキの砂浜がここまで手間をかけて維持されているのは放っておくと侵食で失われてしまうからです。
ハワイ大学などの調査によれば、オアフ島・マウイ島・カウアイ島にある砂浜の実に70%が慢性的に侵食されており、この100年でハワイ全体で13マイル分ものビーチが失われました。オアフ島だけを見ると、既存の砂浜の約25%が消失したとする報告もあります。
背景には海水温の上昇によってサンゴ礁が弱り、砂の供給源となる炭酸カルシウム(サンゴや貝殻が砕けてできる白い砂の材料)が十分に作られなくなっていることが挙げられます。さらに今後、世界の平均海面が2100年までに1〜2メートル近く上昇すると仮定した試算では、ワイキキの砂浜そのものが今世紀中に消えてしまう可能性も指摘されており、州や研究者は防潮構造物の設置や定期的な補砂など複数の対策を組み合わせた長期戦略を検討しています。
2012年のクヒオビーチ工事はあくまで一例でその後もワイキキ東側のロイヤル・ハワイアン・ホテル前(通称カイマナビーチ周辺)など複数のエリアで同様の補砂・護岸工事が繰り返されてきました。専門家の間では、こうした対症療法的な補砂だけでなく、より根本的な防潮構造物の整備を含めた総額6000万ドル規模ともいわれる段階的な戦略が議論されています。
観光客として海に入るとき、そこが「永遠に変わらない自然の砂浜」ではなく、行政・ホテル業界・研究者が協力して維持している場所だと知ると、ワイキキという街の見え方も少し変わってくるはずです。
ハワイ気分を登戸でも
ワイキキの砂浜が「自然そのまま」ではなく、大勢の人の努力で守られてきた場所だと知ると、次にあの白い砂を踏むときの見え方が少し変わるかもしれません。
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まとめ
ワイキキビーチの白い砂浜は、アラワイ運河の埋め立てに始まり、100年近くにわたる補砂工事によって形づくられ、守られてきました。2012年だけでも250万ドルをかけて2万4000立方ヤードの砂が運び込まれたように、あの美しい風景の裏には継続的な投資と工夫があります。
一方でサンゴ礁の衰退や海面上昇により、砂浜は今も侵食の危機にさらされています。次にワイキキを訪れる際は、足元の砂浜がどのようにして今の姿を保っているのか、少し想像してみるのも旅の楽しみ方のひとつかもしれません。