ハワイ、ホノルルのダウンタウンに佇むカワイアハオ教会（Kawaiahaʻo Church）は、単なる美しい教会建築物ではありません。それは、「オアフ島最古の教会」として、ハワイ王国建国から崩壊までの激動の歴史を全て見届けてきた「ハワイのウェストミンスター寺院」とも呼ばれる、極めて由緒正しい場所です。

「なぜこの教会が王室の戴冠式に使われたのか？」「この壮麗な建物がどのように建てられたのか？」といった疑問を思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。この教会のサンゴ石の外壁にはハワイの人々がキリスト教を受け入れ、自らの文化と融合させようとした壮大な物語が刻まれているのです。

この記事では、カワイアハオ教会の歴史、ハワイ王室との繋がりやサンゴ石を用いた建築方法を解説していきます。

カワイアハオ教会とは

オアフ島最古の教会であるカワイアハオ教会は、1820年にキリスト教がハワイに上陸して間もなく設立されました。ハワイ王室の公式な教会として戴冠式や葬儀に使われ、ハワイの伝統文化と西洋文明が交差する、歴史的・精神的な「心臓部」としての役割を担い続けてきました。

カワイアハオ教会の所在地

カワイアハオ教会は、ハワイ州の州都であるホノルル・ダウンタウンのイオラニ宮殿近くに位置しています。この立地こそが、教会がハワイ王国の歴史と深く結びついてきた証拠です。1820年代初頭、アメリカからプロテスタントの宣教師団がハワイに上陸しましたが、彼らが最初に布教の拠点としたのが、このホノルルの地でした。

教会の歴史は、当初の木造の仮設教会から始まりましたが、その場所は一貫してこの地にあり、「オアフ島で最も古い教会」としての地位を確立しています。教会がハワイ王国の行政の中心地に建てられたことは、キリスト教がハワイ社会の支配層にまで浸透していった、歴史の変遷を物語っています。

ハワイ王国と深く結びつくハワイの”ウェストミンスター寺院”

カワイアハオ教会は、別名「ハワイのウェストミンスター寺院」とも呼ばれます。これは、イギリスのウェストミンスター寺院が王室の儀式の場であるように、カワイアハオ教会がハワイ王国の公式な儀式の舞台であったことに由来します。

歴代国王の戴冠式や国葬、王族の結婚式といった、国家にとって最も重要な公式行事の多くが、この厳粛な教会で執り行われてきました。教会の内部には、王族専用の席や、歴代国王・女王の肖像画が飾られており、教会全体がハワイ王国の栄枯盛衰の歴史を静かに見守ってきた歴史的証人としての役割を果たしています。

この教会を訪れることは、単なる西洋建築の鑑賞ではなく、ハワイという独立国の歴史そのものに触れることを意味しているのです。

教会名「カワイアハオ」に込められたハワイ語の意味

教会名である「カワイアハオ（Kawaiahaʻo）」という美しいハワイ語の響きには、この土地の歴史と文化的な意味が込められています。この名前は、ハワイ語で「カ（Ka）」＝定冠詞、「ワイ（Wai）」＝水、「アハオ（Aha’o）」＝ハオという酋長が所有していた場所、つまり「ハオの聖なる水が湧き出る場所」という意味を持っています。

この教会の建設地は、キリスト教伝来以前から、清らかで神聖な水が湧き出る場所として、ハワイの人々にとって特別な意味を持つ土地でした。教会の名称に、この伝統的な土地の記憶とハワイ語の言葉を残したことは、外来の宗教を受け入れつつも、ハワイの文化と土地の神聖性を忘れないという、当時の人々の想いの表れだと言えるでしょう。

14,000個のサンゴ石で築かれた外壁の秘密

カワイアハオ教会の外壁は、4年の歳月をかけて作られた14,000個ものサンゴ石をブロックとして使用した、極めてユニークな構造です。ハワイの自然素材とアメリカ・ニューイングランドの植民地様式が融合したそのデザインはハワイの気候風土に適応しながら、西洋の宗教文化をハワイの地に定着させようとした歴史を物語っています。

厳粛な雰囲気を醸すニューイングランドの教会様式

カワイアハオ教会の全体的なデザインは、設立した宣教師たちの故郷であるアメリカ・ニューイングランド地方の初期の教会建築様式を基調としています。この様式は、ヨーロッパの華美な装飾を避け、質素で簡素な美しさを持つのが特徴です。漆喰の白い壁とシンプルな窓の配置、そして教会の上部にある特徴的な尖塔が、ニューイングランド様式の代表的な要素です。

このデザインは、ハワイの強い日差しを反射し、内部に柔らかな光を取り込むとともに、当時のハワイの人々に厳粛で神聖な雰囲気を伝える役割を果たしました。外来の建築様式でありながら、ハワイの明るい気候風土に見事に溶け込んでいるのは、非常に興味深い点です。

ハワイの文化を伝える歴代王族の肖像画

カワイアハオ教会の歴史的な価値は、建物自体に加えて、教会内部に飾られているハワイ王国の歴代国王や女王の肖像画にも見て取れます。これらの肖像画は、この教会が単なる西洋の教会ではなく、ハワイの歴史そのものを伝える博物館としての役割も担っていることを示しています。

王族の肖像画は、教会の歴史がハワイ王国の歴史と完全に一致していること、そして王族たちがこの教会を精神的な心の拠り所としていたことを雄弁に物語っています。教会を訪れる際は、この肖像画をじっくり鑑賞し、ハワイ王国の栄枯盛衰の物語に思いを馳せてみることが、この教会を深く楽しむための次の一手となるでしょう。

よくある質問

カワイアハオ教会の建設に使われたサンゴ石はどこから運ばれたのですか

ホノルル周辺の海底や浅瀬から、ダイバーによって切り出されました。当時の建設資材の運搬技術では、石材を海外から運ぶのは困難かつ高価であったため、現地で調達できるサンゴ石が主要な建材として採用されたのです。

このサンゴ石ブロックの切り出しと運搬は非常に重労働であり、ハワイの人々が多大な労力を費やして建設にあたった歴史を物語っています。教会の外壁を見るときは、その一つひとつに込められた歴史の重さを感じてみてください。

教会見学の所要時間の目安はどれくらいですか

30分から1時間程度を目安とすべきです。教会内部の礼拝堂は広大ですが、立ち入り禁止区域も設けられています。所要時間の内訳としては、教会内部の空間や肖像画、ステンドグラスをじっくり鑑賞する時間に加えて、教会の外観を撮影したり、敷地内を散策したりする時間を含めてこの程度の時間が適当です。

礼拝堂の静かな雰囲気を味わい、歴史に思いを馳せる時間も確保することをおすすめします。

「ハワイで何番目に古い教会」という情報はありますか

「オアフ島で最も古い教会」であることは確実であり、ハワイ全体ではハワイ島のモクアイカウア教会に次いで2番目か3番目に古いと言われています。1820年代にキリスト教宣教師がハワイ島、マウイ島、オアフ島にほぼ同時に上陸し、それぞれの島で初期の教会を設立したため、その順序は資料によって多少前後することがあるからです。

しかし、王国の中心地で最も早くからその歴史を見つめてきたオアフ島最古の教会としての地位は揺るぎません。

まとめ

カワイアハオ教会は、「オアフ島最古」の教会として、ハワイ王国の戴冠式や歴史的な出来事の舞台となってきた、ハワイの歴史と精神性の心臓部です。14,000個のサンゴ石で築かれたその建物は、ハワイの伝統文化と西洋文明の出会いを今に伝えています。

実務での次のアクションとして、ホノルルを訪れる際は、この教会を単なる観光スポットとして消費するのではなく、王国の歴史の重みに敬意をもって見学し、教会内部の歴代王族の肖像画に注目してみてください。その背景を知ることで、カワイアハオ教会の価値がより深く心に響くでしょう。

参考文献