ハワイにある特別な場所のひとつと言えば、イオラニ宮殿(イオラニ・パレス)です。
19世紀後半に建てられた、王族が実際に住み、執務に当たった宮殿で、独立王国であったころのハワイの雰囲気に浸れます。
この記事ではイオラニ宮殿の歴史や内部の様子、行き方や見学時の注意点などについて解説します。
ハワイアンのアイデンティティともいえる、貴重な史跡に目を向けてみましょう。
目次
イオラニ宮殿はハワイ王国繁栄の象徴
イオラニ宮殿は、ハワイ州の州都であるオアフ島ホノルルのキングストリートにある建造物で、アメリカ合衆国内に現存する唯一の宮殿です。
1882年に竣工し、1893年のクーデターによる王政廃止まで宮廷・公邸として使われており、建物は地下を含めた4階建てです。1階が公務に使う場所、2階が王族の住居でした。
宮殿は欧州の建築様式で建てられており、当時の金額で約36万ドルがかけられています。
イオラニ宮殿には、世界に先駆けて水洗トイレ、お湯と水の出るシャワー、電灯、電話などの最新技術が詰め込まれており、欧米からくる高位の人々をとても驚かせたそうです。
この当時、電灯はイギリスのバッキンガム宮殿やアメリカのホワイトハウスでも使用されていませんでした。
王政廃止後はハワイ州庁舎として使用されていましたが、現在はボランティア団体の「イオラニ宮殿友の会」が、宮殿の維持や管理を行っています。
イオラニ宮殿の1階にあるもの
イオラニ宮殿の1階にある部屋は以下の通りです。
- 大広間
- 青の間
- 正餐の間
- 王座の間
参考:ALOHA PROGRAM「イオラニ宮殿」
青の間
青の間はカーテンやカーペット、椅子などが青で統一された部屋で、謁見室や晩餐前のティールームとして使われていました。
この部屋の壁にはカラカウア王とリリウオカラニ女王の大きな肖像画があります。
正餐の間
正餐の間は青の部屋の隣にあり、ウエスタンスタイルの食事を世界からのゲストと王が共にした場所です。
王の椅子はゲストのごく近くにあり、食事をしながら当時のさまざまな情報を耳にできました。
王座の間
最も華やかで大きな部屋が、王座の間です。
広く、天井も高い大きな部屋で、正面には王夫妻の玉座があります。玉座はなんと、当時のままのオリジナルです。
舞踏会も開かれた場所で、多いときには400〜500人のゲストが来て、夜中までダンスが続けられたそうです。
アジアやヨーロッパなどのさまざまな王室から送られた勲章が壁を飾っており、天井からはオリジナルのシャンデリアが光っています。
イオラニ宮殿の2階にあるもの
宮殿の2階は王族の住居でした。王の寝室、王の執務室、妃の部屋、音楽部屋、幽閉の間、カピオラ二女王の寝室などがあります。
王のベッドにかかるキルトは、1886年のカラカウア王50歳の誕生日にプレゼントされたもののレプリカです。
本物は100年の間に経年劣化したため展示できる状態にないということで、オリジナルキルトにごく近いキルトを新たにつくり、2009年からベッドにかけられています。
そして、当時はまだ珍しかった電話を、王は4つも持っていました。
自分の部屋と妃の部屋、執事の部屋、そしてホノルルハーバーの近くにあったボートハウスに置いていたそうです。
▼キルトやハワイの伝統模様については以下の記事で詳しく解説しています。
イオラニ宮殿の地下にあるもの
地下は王族に使えるものたちの作業場でしたが、現在は展示ギャラリーと執事室、厨房があり、公開されています。
王家に伝わるジュエリーなどが保管されていますので、希少な宝石の数々をぜひ楽しんでください。
ハワイ州観光局のYouTubeチャンネルによると、現在地下の拡張を行っています。19世紀のハワイ王国について、宮殿での食事や音楽、王の政治、王家の遺産についての展示などを予定しているそうです。
参考:ハワイ州観光局アロハプログラム「イオラニ宮殿2/3」
▼ハワイアンジュエリーについて以下の記事で詳しく解説しています。
イオラニ宮殿に関係した2人の王族
イオラニ宮殿が実際に使われたのは、残念ながらさほど長い期間ではありませんでした。
ここで、イオラニ宮殿に深く関係したハワイ王国の2人の王族について解説します。
イオラニ宮殿を建てたハワイ王国7代目の王カラカウア
デイビッド・カラカウア王はハワイ王国7代目の統治者です。
ハワイの文化復興にも貢献した王で、音楽好きで明るく豪快な人柄で知られています。
イオラニ宮殿を建てた後、近代化にともなって「野蛮で卑猥」という理由で50年間も禁止されていたフラを、自身の誕生日会に催すことで復活させました。
「メリー・モナーク(陽気な王様)」としてハワイ国民に愛された王です。
ちなみに現代も行われているフラの祭典は「メリーモナーク・フェスティバル」という名前で、カラカウア王の愛称から名付けられています。
イオラニ宮殿の終焉を見届けたハワイ王国8代目の女王リリウオカラニ
リリウオカラニ女王はカラカウア王の妹で、ハワイ王国8代目、王国最後の王です。最初で最後の女王でもありました。
兄没後に王位につきますが、2年後の1893年にクーデターが勃発、女王は血を流す争いを避けるために退位を選びます。
一時は栄華を極めた王座の間で屈辱的な裁判を受け、5年間の重労働と罰金がかされたうえに、8カ月もの間イオラニ宮殿の2階に幽閉されていました。
この幽閉期間に作ったものが、有名な「女王のキルト」と呼ばれるクレイジーキルトです。
クレイジーキルトとは製法のことで、さまざまな記事をつなぎ合わせてかざり刺繍で継ぎ目を縫います。
現在このキルトは、イオラニ宮殿の2階にある「幽閉の間」で展示中です。女王自身が自分のドレスやヘッドバンドの一部などを使って縫ったキルトで、誕生日や幽閉された日などが刺繍されています。
また、兄と同じく音楽好きだった女王は、歌も制作していました。有名な「アロハ・オエ」はリリウオカラニ女王によるものです。
イオラニ宮殿への行き方と見学方法
イオラニ宮殿へは、ワイキキからダウンタウン方面へ向かうトロリーが便利で、30分程度で宮殿近くへ着けます。
また、自転車(シェアサイクル)も人気で、自転車の場合、早い方ならワイキキから20分程度で着けるでしょう。
自転車の交通ルールは日本と同じですが、指定場所以外での駐輪は禁止されていますので注意しましょう。
イオラニ宮殿の見学方法
イオラニ宮殿の見学は、個々で音声ガイドを聞きながらの見学、もしくは宮殿の解説員に案内してもらっての見学の2つがあります。
個々で音声ガイドを聞く場合は日本語もOKです。専用のヘッドホン付きタブレットによる解説を聞きながら、自分で時間をかけて場所を見学できます。
そしてボランティアガイドによるツアーは、より細かな裏話なども聴ける楽しいツアーです。
日本語のガイドツアーもありますが、定員が20名と少ないため、前もって予約するようにしましょう。
イオラニ宮殿見学時の注意点
以下はイオラニ宮殿の見学時の注意点です。
- 軽装禁止
- 靴カバーの着用
- 飲食禁止
- 大きな荷物は持ち込み不可
- 商業用撮影は事前許可が必要
- 動画やフラッシュ、望遠レンズ、自撮り棒の使用禁止
イオラニ宮殿はハワイアンにとって神聖な場所です。
ビーチウェアなどの軽装で訪問することは控えましょう。写真を撮る場合、商業用撮影は事前申請が必要です。
ハワイの歴史が堪能できるイオラニ宮殿を訪れよう
イオラニ宮殿はハワイの歴史を間近で感じられる華やかな場所です。
ツアーへは当日参加も可能ですが、やはり予約しておくことをおすすめします。
特に日本語のガイドツアーは人数が限られますので、参加を希望する方は早めに予約しましょう。
19世紀にタイムスリップしたかのような気分を、ぜひ楽しんでください。
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