- ハワイ国旗の歴史とカ・ハエ・ハワイイについて
- ハワイとイギリスの関係やその背景について
- ネイティブハワイアンの旗“カナカ・マオリ”について
ハワイはアメリカ合衆国の50番目の州ですが、ハワイの旗はイギリス国旗のユニオンジャックをデザインに使っています。
その背景にはハワイが持つ複雑な歴史があるため、今回はハワイの歴史をなぞりながらハワイ州の旗について解説します。
ハワイ州の旗の説明とハワイ王国時代に旗のデザインにイギリス国旗が取り入れられた理由、そして旗に対するネイティブハワイアンの思いなどを、歴史と共に振り返ってみましょう。
目次
ハワイの州旗はかつてのハワイ王国国旗「カ・ハエ・ハワイイ」
ハワイはアメリカ合衆国の州ですが、その国旗にはユニオンジャックが使われています。
旗のデザインは、アメリカ合衆国国旗の星部分をイギリス国旗のユニオンジャックにし、赤と白、青色の横線が8本入ったものです。
これはハワイが独立国家であったとき、ハワイ王国時代から使っていた旗「カ・ハエ・ハワイイ」と同じデザインです。
「カ・ハエ・ハワイイ」は1800年代に、イギリスのユニオンジャックとアメリカの星条旗をミックスして考案されました。
ハワイ王国繁栄のため2つの大国と良好な関係を保っていこうという、カメハメハ大王の考えによるものと言われています。
8本の横線は、ハワイ諸島の主要8島を表しています。
旗のストライプの色は赤・白・青
旗の横線には3色使われていますが、それぞれの意味は以下の通りです。
【赤の意味】
勇気と力を表しています。
ハワイの勇敢な戦士たちを象徴するのが赤色です。
ハワイ王国を守るために戦った王族や兵士たちの勇気や強さを称える色とされています。
【白の意味】
純粋さと誠実さを表しています。
ハワイ諸島の大自然の美しさ、そして人々の純粋さや誠実さを表すのが白色です。
ハワイの島々が自然と深く結びついていること、そしてハワイ文化における誠実さと調和の精神を象徴しています。
【青の意味】
海と空の美しさを表しています。
ハワイ諸島を囲む海は大変美しい色をしており、古代よりハワイアンによって大切にされてきました。
その美しく大きな海と空の青を表現しています。
ハワイ国旗の変遷
ハワイの旗は、基本的には1816年にカメハメハが作らせたデザインが継承されています。
しかし一部、旗のデザインも変化してきました。
【1816年から1845年まで】
カメハメハ1世によって制定された最初の旗です。
左上にユニオンジャック、赤・白・青のストライプ順で横線は7〜9本でした。
1816年に完成した当初、横線の本数は定まっておらず、7本から9本の間ということになっていたようです。
【1845年から現在】
左上にユニオンジャック、白・赤・青の順を2回繰り返し、その後は白、赤で8本のストライプです。
色の順番が変更され、横線は8本と定められました。
【ハワイ王国7代カラカウア王のときの旗】
カラカウア王の時代には、ハワイ国旗と共に「ロイヤルスタンダード」と呼ばれる旗も使われていました。
白・赤・青の8本のストライプの真ん中に、コート・オブ・アームというハワイ王国章が入ったものです。
そして、白地にコート・オブ・アームが入った旗もありましたがそれはカラカウア王の旗で、イオラニ宮殿に飾られています。
参考:日経ビジネス「ハワイ州旗になぜユニオンジャックが? 英国との意外な歴史的関係」
ハワイの歴史から見る旗作成の経緯
ハワイの歴史をたどると、ハワイの旗ができた経緯がよくわかります。
まず、1778年にイギリス人のキャプテン・クックがハワイ諸島を発見しました。これをきっかけに、西洋の船がハワイに来るようになります。
クックの船に乗っていたジョン・バンクーバーというイギリス人男性は、カメハメハと友好関係を築くことに成功。
カメハメハはバンクーバーを通じてイギリス国王ジョージ3世に書簡を送り、イギリスと同盟を結びました。
1794年に、バンクーバーはハワイとイギリスの友好の証として、カメハメハにイギリス国旗を贈ります。
古代のハワイには布がなかったため、旗はとても貴重なプレゼントとして受け取られました。
カメハメハはイギリス船を見送る際にも、イギリス国旗をなびかせて敬意を表しています。
バンクーバーは、当時はまだハワイ島の首長であったカメハメハに領土の統治方法などを教え、領土争いで頻繁に戦争が起こっていたハワイ諸島の統一を勧めました。
その後、カメハメハはハワイ統一のために動き出し、1795年にはハワイ島からオアフ島までを1つの国とすることに成功。
1810年にはカウアイ島とニイハウ島が王国に加入、ハワイ王国が成立し、カメハメハは大王(1世)となりました。
カメハメハ大王はしばらく贈られたイギリス国旗をそのまま掲げ、当時最大勢力であったイギリスとのつながりがあることを他国の船に示していました。
しかし外国との交易が盛んになりつつあったため、独立国として旗印が必要になったという事情もあり、イギリス海軍のジョージ・ベックリーに旗のデザインを依頼。
できあがってきたものは、カメハメハ大王の意図を汲んでイギリスとアメリカ2つの大国の国旗がデザインに使われていた、という説がよく知られています。
ネイティブハワイアンの旗“カナカ・マオリ”も存在する
正式には認められていませんが、カナカ・マオリと呼ばれるネイティブ・ハワイアンの旗もあります。
カナカ・マオリとは「真実の人」という意味です。真のハワイアンを指すのですね。
ハワイはその歴史の中で、西洋人によって文化や言葉を取り上げられてきました。また、西洋人に持ち込まれた病気によって、ネイティブハワイアンの数も激減してしまっています。
今や少数派となってしまったネイティブハワイアンそのものを表す旗は、誇りと共に存在しているのです。
カナカ・マオリは1843年にイギリス人によって使用禁止になっていますが、この旗こそハワイの旗だと考える方もたくさんおり、家に飾ったり集会などで掲げたりしています。
ハワイアンとハワイ州旗
ハワイアンの中には、現在の州旗に対し、複雑な思いを抱く人も少なくありません。
その理由は、ネイティブハワイアンにとってこの旗が、白人勢力に倒されたハワイ王国の忘れ形見であるためです。
毎年1月17日はハワイ王国崩壊の日として、多くの人が旗を持って王国の宮殿であったイオラニ宮殿に集結します。
なお、集会などで「ハワイの危機」もしくは「ハワイアンの悲しみ」を表現するためにハワイの旗を逆さに掲げる人もいるのですが、それを嫌がるハワイアンもいます。
ハワイ王国とハワイ州の尊厳を損なう行為であると考える人々もいるため、少なくとも観光客は、旗を逆さにしたりしないようにしましょう。
ハワイ国旗は複雑な歴史からできたもの
ハワイはアメリカの州のひとつであるにもかかわらず、その州旗にはイギリス国旗であるユニオンジャックがデザインされています。
それは、ハワイの複雑な歴史がもとになってできたもの。ハワイ王国時代から受け継がれたものです。
ハワイではその国旗・州旗をモチーフにしたアクセサリーや衣服などが人気で、さまざまなアイテムが作られています。ハワイ訪問時には、ぜひ探してみてくださいね。